TOEFL iBTのスピーキングは、瞬発力が必要とされます。言い換えれば、「咄嗟に」「正しく」英語が話せるかどうかが問われます。正確な文法理解と豊富な語彙力をベースに、咄嗟の状況であっても明瞭に話していく必要があります。最初の独立問題2問については、英語の瞬発力に加えて、即興でアイデアを出す力も重要になります。3問目以降の統合問題では、英語の瞬発力に加えて、リスニング力が重要になります。多くの日本人受験者にとって鬼門であるこのセクションですが、少なくとも20点、できれば23点を確保したいところです。このセクションが比較的得意な方は、ぜひ26点以上を狙ってください。

スピーキングの問題形式と時間配分

問題は6つで、独立問題2問、統合問題4問です。独立問題では、個人的な見解を問われるので、お題に沿っていれば何を話しても構いません。一方、統合問題では、リーディングand/orリスニングでインプットした内容をまとめて話すことを求められているので、個人的な見解はほとんど求められていません(例外は問5の後半です)。いずれのタイプの問題でも、まずは英語の瞬発力が必要です。これにはまず何よりも「深くて」正確な文法理解が欠かせません。この点については後述します。

独立問題(問1、問2)では、お題が与えられて15秒で準備をし、45秒でマイクに向かってレコーディングを行います。英語力(含む英語に関する瞬発力)は日頃の鍛錬が大事ですが、即興力についてはもう練習あるのみです。統合問題のうち、問3、問4では、リーディング→リスニング→30秒で準備をし、60秒でレコーディングを行います。問5、問6では、リスニング→20秒で準備をし、60秒でレコーディングを行います。

いずれも、問題中にメモを取ることは可能です。しかし、自分の問題中以外でのメモ取りは禁止されているので、例えばスピーキング開始前の10分休憩でメモを取ったら一発退場です。更に未来永劫TOEFLの受験資格が剥奪されても文句は言えません。絶対にやめましょう。どうしてもテンプレ的なものを使いたい人は反復練習して無意識レベルで使えるように染み込ませてくるべきですし、先にスピーキングをしている受験生の解答をヒントにしたいときはメモなどせずに頭の中だけでやりましょう。

英語における瞬発力とは何か

何事にも、「理解できること」と「実践できること/他の人にそれを伝えられること」の間には、大きな隔たりがあるということは、感覚的にわかる方も多いかと思います。英語では、例えば「現在完了形」についての理解の段階としては、「現在完了のコンセプト自体を自分で理解できる」→「リーディングで現在完了が出てきた際には初見で発見してすぐに意味が理解できる」→「ライティングで現在完了を用いた文章をささっと書ける」→「リスニングで現在完了が出てきた際にはすぐに意味が理解できる」→「スピーキングで現在完了を用いて自分の主張を展開できる」→「現在完了について人に教えることができる」、といった段階があります。

同様に、どのような文法理解も表現方法も語彙も、知る→Rで理解できる→Wで使える→Lで理解できる→Sで使える→人に教えられる、というステップを踏むことになります(人によってはWとLが逆で、R→L→W→Sになるでしょう)。これは、物心がついてから習得する物事については難易度として、活字<音声であり、インプット<アウトプットであるためです。要するに、ある表現(現在完了でも仮定法でも時制の一致でも)についてRでやっと理解できるレベルでは、Sで使えるレベルに全然達していないのです。英語の瞬発力は、どれだけ「深く」英文法を理解しているか、どれだけ「無意識レベルで」その表現や語彙を使えるようになっているか、ということなのです

アウトプットセクションのコツ

スピーキングやライティングでは、なるべくシンプルな構文に、肉付けをしていくことです。あるいは別の言葉で言うと、「日本語」から英語に訳そうとは絶対にせずに、「伝えたいこと」から英文をつくろう、とすることです。伝えたいことやニュアンスが伝わりさえすれば、それが完全な和文英訳である必要は全くないのです。

日本語と英語はあまりにも構造が違う言語なので、「日本語を正しく英語にしよう」とすることはやめた方が良いのですが、「英語自体を正しく使おう」とすることは極めて重要です。海外旅行で意思疎通をする程度なら、ブロークンイングリッシュでも構いませんが、留学や仕事の際にブロークンイングリッシュを押し通そうとすることは絶対に避けるべきです。「英語自体をなるべく正しく使おう」というメンタリティで、常に自分の英語を改良していかなければ、相対する人間の気力と体力と時間を無駄に奪うことになります(自戒の念も込めて)。

例えば、あなたの大学や会社で、日本語で真剣にディスカッションをする状況を思い浮かべてください。て・に・を・は、をしょっちゅう間違えている人や、日本語がカタコトで何を言っているのかすごく注意して聞いてあげないとわからない人がいたら、最初こそ頑張って聞いてあげようとしても、数分で集中力はみるみる削がれて、最後にはその人の喋った内容なんてほとんど記憶に残らないでしょう。グループワークや仕事において、限られた時間で結論を出して前に進まないといけないときは、言葉が覚束ない人に構っているとチームの成果の質が落ちるのです。おかしな言葉遣いの人は、まずそれを許容範囲まで直してからでないと、ディスカッションにも入れてもらえなければレポートも読んでもらえない、土俵に上がれないのです。言語以外の専門知識や経験がよっぽど豊富な人や、数式や芸術等で適切に意思疎通できる能力と才能の持ち主は一部例外かもしれませんが、そうでない限り私たちはみな代替がきく存在なのです。自分の留学や仕事の成果を最大化するためにも、相手にいかに貢献するか(プラスの提供)、いかに足手まといにならないか(マイナスの削減)、という気持ちを忘れてはいけません。「思いやり」は一方的でなく双方向であるときに初めて推進力になるのだと私は思います。

では、英語自体を正しく使おうとする、とはどういうことなのかといえば、まず何より正確な文法理解をもとに文章を組み立てることです。そして語彙や表現の持つニュアンス(例えばwise, smart, cleverは日本語でどれも「賢い」を充てられますが、辞書を引けばそれぞれのニュアンスがかなり異なることがわかります)などにも気を配れたら良いと思います。その上で、ネイティブが使うナチュラルな英語を目指すべきです。多くの日本人が気にする発音は、実はそんなに気にしなくて良い(優先順位としては決して高くない)と思います。アクセントの箇所だけは間違わないようにして、早口にならないように明瞭に話すことを心がければ、わりとどんな発音でも通じます。発音の観点では、世界中で話されている英語の中で、ジャパニーズイングリッシュ(カタカナ英語)はむしろ聞き取りやすい部類に入ります(アクセントの箇所があっていて、かつ明瞭に話せていれば)。インド英語やシンガポール英語、オーストラリア英語や英国の地方都市の英語、フランス語訛りやスペイン語訛り、などなど、ジャパニーズイングリッシュよりも聞き取りにくい英語はたくさんあります。

スピーキング勉強方法

勉強方法はこちらにまとめましたので宜しければご参照ください。

 

今日はここまで。Ciao:)