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海外大学院受験にあたり、エッセイ及び推薦状は極めて重要な要素です。なぜならば各大学院は、出願してきた彼や彼女がその大学院にマッチしているのか、つまり、「(当該大学院が)求める人物像に合致しているか」「将来(当該大学院の)卒業生として世の中で活躍してくれそうかどうか」に最も関心があるからです。
エッセイの種類と本数
各大学院によって、求められるエッセイの種類や、エッセイの本数及び各エッセイの長さは、全く異なります。エッセイの種類は概ね下記のパターンがあります(但しこれはあくまでパターンであって、同じパターン内でも各大学院によって設問自体が異なるのでご注意を。詳細後述します)。
【Statement Of Purpose (SOP)及びそれに類するもの】
自分のこれまでの原体験や経歴(学歴や職歴その他課外活動)と、それらが出願先の大学院での勉強及び卒業後のキャリアにどのように繋がるか、についてアピールする類のエッセイです。
【研究計画書及びそれに類するもの】
大学院で勉強したい具体的な内容(及び、これまでの経歴や卒業後のキャリア)について、主としてアカデミックな視点でアピールする類のエッセイです。
【Analytical Essay及びそれに類するもの】
与えられたトピックについて短めに(例えば500 wordsくらいで)考察をまとめる類の課題で、出願者のアカデミックな素養や論理的思考などに関する潜在能力を確認しているものと思われます。
【Writing Sample及びそれに類するもの】
出願者がこれまで執筆した論文の抜粋等を提出する類の課題で、出願者が既に持ち合わせているアカデミックな力量や今後の伸び代を確認しているものと思われます。
設問にきちんと答えているか
ここからは、本記事でエッセイの基本をいくつかおさえておきましょう。まずは「設問にきちんと答えているか」です。ここでは私が受験&合格した2校と、受験しなかった1校の、合計3校の国際関係大学院の設問(2018年秋入学希望者用)を例に出します。
この3校が求めるエッセイとそれぞれの最大words数は下記の種類でした。
● Fletcher: 計2本(SOP_800 words、追加SOP_500 words)
● SAIS: 計2本(SOP_600words、Analytical Essay_600 words)
● SIPA: 計3本(SOP_400 words、Analytical Essay_200 words、追加SOP_400 words)
カテゴリー分けしてしまうと上記のようになりますが、各大学院によって同じカテゴリー内でも設問が違うのです。具体例として、各校が共通で求めていたSOPに類するエッセイの設問を、下記に記載します。
(Quote)
● Fletcher’s Committee on Admissions seeks to ensure that there is a good match between each admitted student and the School.
Please tell us your goals for graduate study at Fletcher and for your career.
Describe the elements of your personal, professional, and/or academic background that have prepared you for your chosen career path.
Why is The Fletcher School the right place to pursue your academic objectives and to prepare you to meet your professional goals? Why have you selected the degree program to which you are applying?
● Discuss your goals for graduate study and for your professional career.
What experiences have most contributed to your desire to study international relations?
How will Johns Hopkins SAIS and your intended concentration serve to meet your academic and professional goals? If you have selected International Development as your first choice concentration, it is important to also address your interests in your second choice concentration as your application may be reviewed by both programs.
● Please elaborate on why you have chosen to apply to the MIA/MPA program. How will this program enable you to achieve your career goals? Describe your academic and research interests and career objectives.
(Unquote)
上記3つのお題を見て、「要するにどれもSOPを書けば良いのね、と言ってしまっては絶対にダメ」です。なぜならば、各大学院の設問自体が明らかに異なるからです。聞かれたこと、つまり、相手が知りたいこと、に答えるのは基本中の基本です。
実際に、私は3校のうち上から2校に出願したわけですが、両校の1問目のエッセイ(SOP)のうち300 words程度だけ共通の文章を使いました。つまり、両校の1問目のエッセイ(SOP)の中身のうちFletcher 500 words分(最大800 wordsだったので)とSAIS 300 words分(最大600 wordsだったので)は完全に別の内容で文章を書きました。
(追記)そして、聞かれたことにきちんと答えるために絶対にすべきこととしては、各大学院のアドミッションブログやアドミッションのページを確認し、大学院側(=アドミッション側)の公式見解を確認することです(本記事執筆当初は書き漏れていたので18年7月17日に追記しました)。
内容の素晴らしいエッセイにするために
エッセイの内容面のクオリティは、「志望校のことをどれくらいわかっているか」及び「自分自身のことをどれくらいわかっているか」の2点に大きく左右されます。
1点目について最も効果的な対策は、キャンパスビジットを行うことです。キャンパスビジットについては別記事で詳細にまとめましたので、宜しければリンク先(キャンパスビジット)をご覧ください。時間的制約によってビジットが叶わない方はぜひ、アドミッション主催のオンラインでの説明会があれば参加してみたり、アドミッションや教授陣や在校生へメール等で個人的に気になる事項の問い合わせをしてみたり、OBOGとの接触機会があればコンタクトをしてみたり、工夫してみてください。
この1点目でのポイントは、「インターネット等で誰でも取れる情報以外の、出願者自身が個人的に収集した情報」があるかどうか、そして「それらの情報を踏まえた上で当該大学院に出願しているか」です。また、これは決してインターネット等で誰でも取れる情報を軽視しているわけではなく、むしろインターネット等で誰でも取れる情報は確認済であることがスタートラインです。例えば、前述した通りアドミッションのブログand/orウェブサイトは絶対に確認しましょう。
2点目について何よりもお勧めする方法は、第三者(出願者自身と出願先のアドミッション以外の人)、例えば友人や先輩後輩や親戚、に適宜見てもらうことです。更に言えば、必要に応じて、エッセイカウンセラーの起用もアリです。良いエッセイカウンセラーは、「稚拙な英語表現があればそれらを教養ある洗練された表現に直してくれる」だけではなく、「出願者自身の過去から現在までの経験の中から、出願者自身が気づいていないものまで含めて、大学院合格に繋がりそうな原体験やエピソードを引き出してくれる」ようです。このあたりは、エッセイカウンセラーを起用しての合格体験記をネット上で拾い読みしていただければイメージが湧くでしょう。尚、私はエッセイカウンセラーの方には誰ともお会いしたことはありませんが、Googleで検索していた限りでは、個人的にはもしお願いするとしたらまず「江戸義塾」に行ってみようかな、と思っていました。理由は、素晴らしい実績に加えて、先生のスタイルが自分に合いそうだなと思ったからです。
私の場合は、(それまで色々と苦い人生経験をしてきた結果として(?))精度の高い自己分析は完了しており、出願先の大学院別に自分の戦略と戦術は既に十分練れている自信があったので、結局エッセイカウンセラーは起用しませんでした。しかしエッセイ執筆の過程で私は、非常に高い教養を持ち完璧に英語を使いこなせる英語の先生と、頭脳明晰かつ経験豊富で人柄も大変素敵な準ネイティブの先輩に、英語の表現についてより洗練されたものになるよう何度もドラフトを見ていただきアドバイスをしていただきました。
この2点目でのポイントは、「自分が知っている自分の強みや弱み」だけではなく「自分が気づいていない自分の強みや弱み」も含め、できるだけ正確に自分自身を把握すること、そしてその中から最も有効そうな(出願先の学校が求めている部分と合致しそうな)エピソードやアピールポイントを効果的にエッセイに入れ込んでいくことです。
この2点がわかっていれば、将来何をしたいのか、どうしてここでこれを勉強したいのか、という質問にも、出願時点でできる限りの高い精度で答えることができ、結果として良いエッセイになるでしょう。未来に関する精度に100%なんてないので、あくまで仮説でOKです。出願前に立てた仮説と、出願後や入学後に実際に抱いた興味関心が、多少ずれても軌道修正はできます。しかし大幅にずれるとその学校に行ったこと自体の意味がなくなってしまい、それは出願者としても学校としても避けたいので、将来やりたいことは一生懸命考えましょう。出願者のうち多くは自分の将来の方向性に確信なんてないわけで、それでも、「きっとこうなのだ、なぜなら」を繰り返して考え抜いて仮説を立てて判断をしているのだと思います。
文法ミスや誤字脱字はないか
当然のことながら、文法ミスや誤字脱字は言語道断であり論外です。ミスを絶対になくすために、「自分以外の複数人に読んでもらうこと(自分が気づけなかった、勘違いや思い込みを指摘してもらえるように)」及び「自分で自分のエッセイを読む際にはプリントアウトしたものを読むこと(紙媒体で読むとミスに気づけるのに、パソコン画面で読んでいると気づかない場合は多々あります)」の2点は絶対に行いましょう。文法ミスや誤字脱字などの最もしょうもない類のミスの中でも一番やってはいけないミスは、「出願校の名前のミス」です。SOPなどで、他の学校向けのSOPの文章をリサイクルしたりした際に起きうるミスですが、これは最悪の中の最悪です。くれぐれも、ドラフトができる度にプリントアウトして読むこと、そして複数人に読んでもらうこと、は徹底しましょう。私自身、途中のドラフトの時点で教授の名前のスペルを間違えていることに気づいて直しました。さらに、なんと最終ドラフトの時点で、第一志望の大学院に提出するエッセイ内で言及していた大学院の科目群の略称をミスタイプしていた(DHP, ILO, EIBが正しいのに、DHP, ILP, EIBとタイプしていた)ことに気づいて冷や汗をかきました。みなさんも気をつけてください。
そして文法ミスや誤字脱字に関してネイティブチェックを依頼する際にも注意が必要です。チェックはネイティブだから誰でも良いというわけでは全くなく、正式な出願書類である以上は「ネイティブも使ってしまう表現だけどこれは本当は間違い」「口語では問題ないが書類に書く表現ではない」というミスは避けなければならないので、ネイティブチェックは教養のあるネイティブに依頼すべきです。あるいは、教養があり正確な英語を完璧に習得している日本人に依頼すべきです。
読みやすい文章になっているか
加えて、文法ミスや誤字脱字がなかったとしても読みにくい文章になっていないか気をつけましょう。文法ミスや誤字脱字については完全に正しい英語を学んでいれば非ネイティブでも100%気づけますが、ネイティブにとって読みやすい文章になっているか(英語的に間違ってはいないが少し不自然な表現や、書き手の意図を読み手が掴みきれない文章がないか、等)、という観点は、非ネイティブにとってはニュアンスも含めて判断が少々難しい場合があります。より完成度の高い文章を目指すのであれば、先輩でも後輩でも友人でも先生でも良いので、とにかく「教養のある」ネイティブもしくはネイティブに限りなく近い準ネイティブ(幼少期から青年期にかけて、海外のハイレベルな教育機関で初等〜高等教育を受けた日本人、等)にダブルチェックを依頼するのが近道かと思います。
今日はここまで。
Ciao:)