キャンパスビジットに行こうか迷っている人から相談を受けると、私は「行くべきだと全力で即答」します。しかしこの感覚は、キャンパスビジットをした後だからこそのものだと私もわかっています。実際にキャンパスビジットをする前は、本当に必要なのか、まとまった時間を捻出しなければいけないし、おまけに費用もかかるし、と考えていました。しかし迷っているくらいなら行くべきです。その理由を本記事でお伝えできればと思います。

キャンパスビジットがなぜ有意義なのか

はじめにお伝えしておくと、キャンパスビジットは合格への絶対条件ではありません。むしろ、世界中から学生が集まるトップ校になればなるほど、出願前にビジットする人は決して多くありません(というよりビジットする人の方が少数派のはずです)。なので、これからここで私がキャンパスビジットのメリットを力説しますが、キャンパスビジットをしなくても合格できる可能性は十分にあるはず、ということを最初にお伝えしておきます。

そしてこれが実はキャンパスビジットをおすすめする理由に繋がっていきます。つまり、キャンパスビジットをする人は、キャンパスビジットをするだけで選ばれし少数派になれるのです。特に、海を越えて山を越えて遠いところからビジットしてくる出願者に対して、アドミッションが好意的な印象を持つのは必然です。まずアドミッションは、ビジットしてきた出願者の、意欲の大きさや学校への興味関心の大きさを評価するでしょう。そしてそれだけではありません。アドミッションがキャンパスビジットをしてほしい理由は、その学校に最もマッチした学生をリクルートしたいからです。つまり、現地で説明会や質問会に参加し、アドミッションや教授や在学生と話をした出願者の志望度や能力は、そうでない出願者の志望度や能力よりも、より信頼に足ると思われるのです。

このあたりは、日本における就職活動(新卒)におけるOBOG訪問の重要性と似ていると思います。なぜOBOG訪問が大事なのかと言えば、それは志望度や熱意に説得力が生まれるからです。また、OBOG訪問を経ての出願であれば、入社後の活躍の可能性が高く、逆に入社後のミスマッチのリスクも少ない、と予想されるでしょう。

海外大学院の合否も、一言で言えばマッチングなのです。テストスコアやGPAは確かに重要な要素だと思いますが、それが合格の最終的な決め手になるのではなく、あくまで全ての出願資料を踏まえてのマッチング度合いが決め手となると考えて差し支えないでしょう。キャンパスビジットが有意義な理由は、出願者とアドミッションが、お互いのことを直接知り直接感じることができること、及び付随的な理由として、そうやって直接アドミッションや学校と繋がっている出願者は少数派であるゆえに他の出願者と自分を差別化できることです。

FAQ「キャンパスビジットして減点されてしまわないか怖いです」

よくある心配事として、「キャンパスビジットに行った結果、マイナス評価がついたらどうしよう」というものがあります。この懸念を持っている人の大半は英語力and/or学習計画やキャリアビジョンに自信がないと推察されますが(現にビジット前の私はそうでした)、みなさまへのアドバイスとしては:

・わざわざ海を越えて学校のことを知りに来てくれた人に、マイナス評価はおそらくどうやっても付かない。ビジット時に英語力が足りなくても研究分野や将来の構想が固まっていなくても、出願時までに英語力を上げてスコアを確保すれば良い話だし、研究分野や将来の構想はビジットして人に会うことで具体化できていくものだと思います。

・TOEFL iBTスコア(あるいは人によってはGREスコアや学部時代のGPA)に自信がない人ほど、現地で熱量やガッツを示した方が、出願時にTOEFL iBTスコアがギリギリ届いていなかったとしても合格させてもらえる可能性あり。学校にもよりますが、公表している足切りラインが100の大学院で、90点台での合格者もいます。まずはスコア確保に全力を尽くすべき(無慈悲に普通に足切りされる場合も多々あるので)ですが、それ以外にもやれることは全てやっておきましょう。

FAQ「そうは言っても、現地に行けない人はどうすれば良いですか」

・キャンパスビジットの肝は、「アドミッション・教授・学生(・OBOG)と出願者が、直接話をして、生の情報をお互いに得られる機会」だということです。なので、現地に行けなくても、メールやSkype等を使って「アドミッション・教授・学生(・OBOG)と出願者が、直接話をして、生の情報をお互いに得られる」を達成することは可能です。それによって出願者の志望度が高まり、エッセイの内容が具体的になればOKです。相手に自分の熱量やパッションまで伝えられれば尚良しです。

・逆に最も良くないのは、志望度が高い出願先に対して、出願書類提出以外のコンタクトを一切とらないことです。インターネットの恩恵で、公表されている情報だけでも確かに膨大ですが、それらはあくまで「万人向け」の情報です。出願の際に、万人向けに公表された情報だけでは、出願者個人にとっては基本的に足りないはずです。

・また、もし仮に公表情報だけで事足りて出願できたとしても、それでは逆に、アドミッションはその出願者の出願書類だけで、出願者についての十分な情報が得られるでしょうか。できることなら、もっと出願者のことを知りたいと思うはずです。誰が見てもキラキラピカピカの経歴とスコアで、他の追随を許さない頭脳及び書面での自己アピール力の持ち主で、当該大学院に行く理由や卒業後の進路についても明瞭で納得感のあるものであれば、出願書類を提出するだけで良いかもしれませんが。

FAQ「期間はどれくらい必要で、時期はいつくらいが良いですか」

・実りあるビジットにするためには、1校につきできれば2日(本命なら3日行っても良いと思います)、少なくとも丸1日、費やした方が良いと思います。私は本命2校には3日かけたので、エッセイに入りきらないくらいの大量のネタを確保でき(つまり厳選に厳選を重ねたネタを使用でき)、面接でも猛烈にアピールができました。一方で、半日で済ませた学校も2つありましたが、半日しか見なかった学校ではエッセイに書けるようなネタはあまり増えませんでした。ただ、行ったという事実は残るのと、キャンパスの雰囲気はわかるので、志望度が高くない学校であれば時間がないなら半日でも良いのかもしれません。しかし繰り返しですが、個人的にオススメするのは1校につき少なくとも丸1日以上、できれば2日です。

・アドミッションと直接話をし、お互いを知ること(相手を知ると同時に自分を伝えること)は極めて大事です。しかしそれに加えて、キャンパスビジットの醍醐味は、複数の在校生とお話しさせていただくこと、及び、授業聴講をしたり教授とお話ししたりさせていただくことです。となると必然的に、学校の長期休みは確実に避ける必要があります。そしてできれば、試験期間も外した方が良いでしょう。以上を踏まえると、学校のカレンダーにもよりますが、キャンパスビジットの狙い目としては9月末〜11月、もしくは2月〜4月、の間で、試験期間や試験休みがない期間になります。

・そして、上記の理由で、土日は基本的にキャンパスビジットができません。ですので、土日は移動に費やしたり観光をしてみたり、在校生とコネクションがあれば個人的にアポイントを取ってあってみたりと、工夫が必要です。

FAQ「どうやってキャンパスビジットをするのですか」

・学校の公式ホームページをまずはみてください。prospective students向けに色々な情報が出ているはずで、その中にアドミッション主催の説明会や、在校生とのコーヒーアワーや、聴講可能な授業や、アドミッションによるインタビュー(面接)の、日程が把握できたり申し込みができるようになっています(学校によりますが、8月頃から)。もしなっていなければ、あるいはホームページ上の日程と自分の都合が合わなければ、遠慮なくアドミッションにメール等で問い合わせをしましょう。特に社会人の方は、1週間を超える休暇を取得することが難しいと思いますので、遠慮なく問い合わせをして個別の説明や面談をセットしましょう。

・キャンパスビジットを計画する手順としては、ビジットする志望校を絞り込みつつ、志望校のビジット関連のイベントに申し込んだり、アドミッション(及び必要に応じて教授や在校生)に連絡してビジット関連のアポイントをFIXする→航空券などの移動手段を確保する→現地の宿を確保する、という順番になるかと思います。また、在校生や卒業生が知人友人でいる場合は、ぜひ連絡をしてみましょう。

ご参考:私のキャンパスビジットスケジュール

  • 木曜:午後DC着
  • 金曜:ジョージダウン大学MSFS(キャンパス散歩→在校生と1時間コーヒー→午後2時からの公式説明会参加)→ ジョンズホプキンス大学SAIS(午後6時からの公式説明会参加)。
  • 土曜と日曜:大学が休みなので、DC観光(DC中心部の美術館や博物館は、充実している上に基本的に無料なのでおすすめです。私は今回は王道のスミソニアン航空宇宙博物館とナショナルギャラリーへ行きました)。
  • 月曜:ジョンズホプキンス大学SAIS(アドミッションと会話・午前午後で授業2コマ聴講・在校生と会話)。
  • 火曜:ジョンズホプキンス大学SAIS(アドミッションと会話・午前に授業1コマ聴講・午後にアドミッションと面接)→ 夕方の便で空路でボストンへ移動。
  • 水曜:ハーバード大学HKS(午後に授業1コマ聴講・ハーバード散策)。
  • 木曜:ハーバード大学HKS(午前に授業1コマ聴講・午後にHBS在学中の日本人の友人とコーヒー・夕方から公式説明会参加)。
  • 金曜:朝に空路でNYへ移動→コロンビア大学SIPA(昼からの公式説明会参加・授業は金曜に聴講可能授業がなかった為、聴講できず)。国連本部見学ツアー参加。
  • 土曜と日曜:大学が休みなので、NY観光。NY在住の日本人SIPA卒業生とコーヒー。日曜の夕方に空路で再びボストンへ移動。
  • 月曜:タフツ大学Fletcher(終日の公式説明会オープンデイ参加・終了後に日本人在校生の方にキャンパス案内をしていただく・日本人在校生の方と夜ご飯)
  • 火曜:タフツ大学Fletcher(午前午後で授業2コマ聴講・多国籍の在校生とランチ)
  • 水曜:タフツ大学Fletcher(午前午後で授業2コマ聴講・多国籍の在校生とランチ・日本人在校生とコーヒー・夕方にアドミッションと面接)
  • 木曜:午前に空路で帰国。

※ 社会人の方の大多数はおそらく2週間の休暇を取得することは困難だと思われますので、ビジット校を事前にある程度絞り込むことや、ビジット校に対して個別でアポイントを取る(学校側が設定している説明会等の日時が合わない場合が出てくると思うので)ようにしましょう。私自身、もしも1週間(5営業日)しか時間がなかったとしたら、土日を国際線での移動に使って、現地ではSAIS=1.5~2日、コロンビア1日、ハーバード=0~0.5日、フレッチャー=1.5~2日、にしたと思います。

※ 治安に関してはよく事前に情報収拾をしましょう。特に女性や、治安が良くない地域へ行かれる方は、夜間の移動は避けましょう。

 

今日はここまで。

Ciao:)