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昨日のボーゲル塾で発表担当でした。ボーゲル塾では、勉強会の冒頭15分前後で発表と問題提起があり、その後の60分程度は参加者みんなで議論をしています*。自由な議論を担保するために、議論内容は非公開なのですが、私の担当パートの資料(つまり私個人の簡単な調べ学習の内容)については別に共有しても問題ないかと思うので一部共有します。みなさんにもぜひ関心を持ってもらえたら嬉しいです。
*そもそもボーゲル塾ってなに?という方はこちらの過去記事を参照してください。
要旨まとめ
今回はMake Japan Innovative (Again?) というテーマでした。私の担当箇所ではイノベーションや、アントレプレナー(起業家)を生み出すエコシステムとしての地方行政の可能性について取り上げたいと思いました。
というわけで、21世紀にイノベーションやアントレプレナーを生み出しまくっている4つの好事例を挙げました(人口と経済規模の、大きい町から小さい町まで選んでみました)。
また、比較のため、20世紀にイノベーション創出の役割を担っていたものの直近ではその名声が鳴りを潜めている2つの町の事例も挙げました。
- 4つの好事例:福岡県福岡市、茨城県つくば市、山形県鶴岡市、宮城県女川町
- 2つの比較事例:大阪府東大阪市、東京都大田区
好事例の共通点として、
A. 文化:「若者」および「外からの人材」の積極的参加/活用/融合が盛ん→20世紀型の古い成功の方程式や文化や柵に囚われない、目的志向の柔軟な意思決定が尊重される。
B. 行政:「経営目線」「テーマ/ヴィジョン」がある→行政は予算を所与の条件とした分配者ではなく、現実を直視しながら理想を描き追い求める未来志向のリーダー。
C. 魅力:「職住近接」「誇れる地元」などの特徴→ワークライフバランスの観点での魅力もあり、働き盛りの世代が集まってくる。
D. 技術:「大学等の研究機関」and/or「職人」を有している→破壊的イノベーションもしくは漸進的イノベーションの少なくともいずれかが生まれやすい。
の4点を見つけました。一方の比較事例では、D以外のABCの要素が欠けているように見受けられ、都会であるがゆえに工夫をしなくても(敢えて新しいことに取り組まなくても向こう数年間は)儲かる=税収が確保できる見込みであることが、「ジリ貧」の容認に繋がっている印象を受けました。
尚、比較事例に挙げていませんがもっと小さな町では、何をやっても税収は増えないと悲観的になって、お上に予算をねだる&それを分配する以外の動きをしておらず、「ジリ貧」容認に繋がっているところも多々あると思います。
以下、本当に面白いと思った記事を厳選しているので、テーマに興味が少しでもありましたらぜひ下記の記事をいくつか読んでほしいです。
好事例【1】福岡県福岡市
- 36歳で福岡市長になったら、まわりは敵だらけだった_2018.12.5(著書「福岡市を経営する」からWeb用に再編集された記事)
- 高島市長が語るスタートアップ都市福岡の戦略_2015.9.1)
好事例【2】茨城県つくば市
- 科学技術の力で世界に貢献する。「未来都市」が担う使命と行政の役割_2019.2.18
- 「つくば市をアジャイル行政に」——26歳財務省官僚がつくば副市長に転身した理由_2018.1.23
好事例【3】山形県鶴岡市
- バイオベンチャーの「聖地」が山形県に生まれた理由──「普通なものは必要ない」鶴岡サイエンスパーク成功の秘密_2018.9.21
- 「鶴岡の奇蹟」と産学連携_2015.6.1
好事例【4】宮城県女川町
- 「還暦以上は全員弾よけになる」宣言が生んだ力_2018.12.26
- 被災した宮城県女川町で挑む”千年に一度のまちづくり”–注目の社会起業家特集「アスヘノキボウ」_2017.1.16)
好事例【番外編】北海道夕張市
- 市長は年収251万「人口減」の行き着く先 〜夕張市長が挑む「明るい未来」〜_2017.9.29
-
行政サービス最低の夕張がなぜコンパクトシティに成功したのか?_2018.8.15
今回はイノベーションとアントレプレナーがテーマだったので取り上げていませんが、非常に苦しい状況から諦めずに形成逆転を目指す町としては、北海道夕張市も非常に良い事例だと思うので、少し脱線になりますが貼りました。
比較事例の紹介
さて、ここから先、以下は比較事例です。
東大阪や大田区が持つ、技術力の評判はみなさんご存知の方も多いと思うので、ここでは意図的にクリティカルな視点(Devil’s advocate: 悪魔の代弁者、の立場)からの記事を紹介しています。決して批判をしたい意図ではないので悪しからずです。
比較事例【I】大阪府東大阪市
- 虚構の「まいど1号」が持ち上げられ、意義ある「はやぶさ2」がつぶされる現実_2013.1.7
- まいど1号の憂鬱_2009.5.19_元記事がアクセス不能なため、転載版
比較事例【II】東京都大田区
- 「下町ボブスレー」が浮き彫りにした、日本の職人技の誇りとおごり_2018.6.8)
- 下町ボブスレー問題で露呈した、日本人のヌルいビジネス感覚_2018.2.14)
これをみると、こう、せっかくの技術力、何か活かし方次第でもうちょっとインパクトのあることをできたんじゃないかと思わせられる、もったいないケースだと私は思いました。
例えば冒頭で紹介した、好事例が持つ共通項のA(若者や外からの人材を活かす文化)やB(経営目線とヴィジョンがある行政and/orリーダー)の要素がもっとあれば違った展開になったのではないかと思います。
追記:下町ロケットと、ホリエモンロケット
そして同じ観点(若者や外からの人材を活かす文化や、経営目線とヴィジョンがあるリーダー)から、ロケットなんかは個人的に、ホリエモンロケットの方が遥かにワクワクします。
- ホリエモンロケットMOMO3号機発表、本格参入ねらう「宇宙輸送サービス」への道筋_2019.3.22
- ホリエモン独占告白「僕がロケット開発の先に見る夢」2019.5.26
地域行政の話とは少し離れてしまいますが、ホリエモンさんや、キングコング西野さんといった、イノベーションとアントレプレナーシップの塊みたいな人が「良い意味で」注目される世の中になってきたこと(彼らは、既存秩序の破壊ではなく、近い未来を生きるための創造をしようとしている、と感じる人が増えてきたこと)も、未来の日本にとって明るい材料なのではないかと思います。
See you soon:)