更新お待たせしました。今回は今学期の履修科目をまとめてみました。とはいえ授業はまだ序盤ですので、授業の詳細についてはまた秋学期終了後に更新します(無事に生き延びられれば……!笑)。

尚、フレッチャーには無数の興味深い授業があるものの、フレッチャー生は各学期につきおよそ4科目しか履修できないので、私もここでは4科目にしか触れられません。そして私の学期はまだ始まったばかりです(笑)ので、フレッチャーへの出願を検討されている方をはじめ、フレッチャーの授業に興味のある方は下記だけでなくぜひこちらのジャパンクラブのサイト内の授業紹介(日本語で読めます)も参照してください。

DHP P217: GLOBAL POLITICAL ECONOMY

まずはじめに紹介するのは、Drezner教授による国際政治経済の授業です。国際政治経済学は、国際関係論と国際経済学から発展してきたものですが、伝統的な国際関係論とも異なるし、伝統的な国際経済学とも異なります。「戦争や暴力といったものは、グローバルな相互作用の一片に過ぎず、それだけでは十分に世界を知ることはできない。財やサービス、資本、労働力、文化、アイデア、等々、絶え間なく国境を越えていく様々な流れや相互作用に注目しよう」という授業で、国家だけでなく個人や企業も重要なアクターとみなし、テクノロジーやイデオロギーあるいはパワーバランスの変化が国境を越えた相互作用に与える影響にも気を配るあたりも特徴と言えるでしょう。

フレッチャーのホームページからコースの概要を引用します:

What determines the direction, magnitude, governance, and fluctuation of international economic exchange? This course surveys the theories and issue areas of the global political economy, both in the current day and in the past. Different analytical models are presented to explain the variations in economic exchange over time. The issue areas that will be examined include: world trade, monetary orders, global finance, and foreign investment. Current topics that will be covered include: the effects of the 2007-2008 financial crisis, the rise of the BRIC economies, the future of the dollar, and the future of global economic governance.
This course will be taught during Fall 2018 by Professor Dan Drezner

受講動機は、アカデミア界隈の親しい友人のひとりがDrezner教授について「大変著名で力のある学者だからフレッチャーに行くのであれば&国際政治経済に興味関心があるのであれば、ぜひ受講すべき」と勧めてくれたこと、及び、愛読していた18年春フレッチャーMALD卒の先輩のブログに、本授業について下記のような言及があり、非常に興味を持ったので受講しています。

そもそも国際政治経済という学問はイギリス・アメリカ発祥のもので、国際政治経済に特化している教授は日本には存在しません。日本では多くの国際政治学者が、国際政治経済にも片足を突っ込んでいる状況であるため、日本にいると国際政治経済の位置づけが不明かつ権威(Big Name)がいないために学ぶこともできません。更にドレズナーはWashington PostやNew York Timesに2日に1度は寄稿している影響力の大きい評論家として顔も持ち合わせています。国際政治経済を全般的に学びたかったため、ドレズナー個人への興味が強かったため受講。

高い期待を持って授業を受け始めましたが、今のところその高い期待をも超える面白さです。そして教授は評判通りの弾丸トークですが、頻繁に学生の質問を促し、どんな質問にも矢継ぎ早に歯切れよく答えて行くので、大教室の授業ながらインタラクティブなスタイルで常に活況を呈しています。

ちなみに、本授業とは無関係ですがブログといえば、18年春フレッチャーMIB卒の先輩のブログもすごく充実しているので、フレッチャーについてもっと知りたい方や、MIBの魅力について知りたい方はぜひご覧ください(個人的には、留学生紹介のコーナーが特に好きです)。

DHP D232: GENDER, CULTURE AND CONFLICT IN COMPLEX HUMANITARIAN EMERGENCIES

次に紹介するのは、Mazurana教授とStites教授による、人道危機下の支援やジェンダーに注目する授業です。1クラスで、教授は2人のうち、回によってどちらかが担当します。今のところMazurana教授の授業しかまだ受けていませんが、Mazurana教授は紛争研究やジェンダー研究の第一人者であり、国連事務局、UNDP、UNHCR、UNWOMEN、世銀、ICC、などで活躍された経歴の持ち主で、フィールドでの経験も豊富な実務家の側面もあります。綺麗で落ち着いた語り口ながら、時にシリアスに、時にユーモアを交えて、非常にセンシティブなトピックスにも関わらず絶妙な教室の空気をつくりだして上手に教えてくれます/考えさせてくれます。

この授業は、「武力紛争、テロリズム、戦争経済、人道危機、平和構築といった事柄、そしてそれらに伴って行使される暴力・割り当てられる役割・尊重されるべき権利等について、ジェンダーの観点を積極的に織り交ぜながら学んでいこう」という授業です。

個人的には、日本ではまだまだジェンダーに関する意識があまりないように感じます。少なくとも私が日本でジェンダーという言葉と聞いて連想するイメージはフェミニズムでした。しかしこの授業が始まってまず最初にわかったことは、ジェンダーとは本来フェミニズムではなく、性別の違いにより生じる差異、つまり、女性特有の立場や状況・特に女性に必要な保護や権利に注目することはもちろんながら、女性に限らず「性別の違いにより生じる差異」は全て対象となります。例えば男性が男性であることによって置かれる状況や危険等についても当然スコープに入るわけです。

そしてこの授業は、ジェンダーについて学びが多いだけでなく、ジェンダーの文脈を抜きにしても人道危機や人間の安全保障について学ぶ事が大変多い授業だと感じています。

フレッチャーのホームページからコースの概要を引用します:

“This course examines situations of armed conflict, civilian experiences of these crises, and the international and national humanitarian and military responses to these situations from a gender perspective and highlights the policy and program implications that this perspective presents. Topics include gender analyses of current trends in armed conflict and terrorism; links among war economies, globalization and armed conflict; the manipulation of gender roles to fuel war and violence; gender and livelihoods in crises; masculinities in conflict; sexual and gender-based violence; women’s rights in international humanitarian and human rights law; and peacebuilding. Case studies are drawn from recent and current armed conflicts worldwide. This course is cross-listed with the Friedman School of Nutrition Science and Policy.
This course will be taught during Fall 2018 by professors Dyan Mazurana and Elizabeth Stites”

受講動機は、人道支援や人間の安全保障について興味関心があったことに加えて、同じ寮に住んでいる2年生のメキシコ人をはじめ、昨年の受講者が口を揃えておすすめしていたからです。amazonや食べログに限らず、授業の選択に際しても口コミは大事ですね(と言いつつ、口コミがあってもなくても、はじめはShopping dayや最初の週の授業を活用して履修予定科目数よりも多くの授業に行ってみることをおすすめします)。

DHP P222: DEVELOPMENT AID IN PRACTICE

3つ目に紹介するのは、Elke教授による開発援助の理論と実践に関する授業で、「Participation、Capacity building、Conditionality等々をはじめとする開発経済のキーコンセプト(どれも非常にcontroversial)について、みんな考えながら/ディスカッションしながら学んでいこう」という授業です。Elke教授はフレッチャー出身かつフレッチャーの教授なのですが、上記のリンク先を見ていただければわかります通り、実は音楽の学位や音楽の経験もお持ちで、なんとニューイングランド音楽院の教授でもあります(音楽院では「音楽と社会変革」という授業を教えているそう)。そしてこれまで、中南米や東部アフリカ等において、貧困削減、環境保護、HIVエイズ、ジェンダー、音楽教育といったプロジェクトに携わってきた経験をお持ちです。

フレッチャーのホームページからコースの概要を引用します:

This course provides an overview of the operational and professional world of development. It covers choices, key concepts, and the main tools in the practice of development. There will be a focus on management and leadership challenges that development professionals face, both from the policy and practitioner perspective. Students will not learn technical knowledge in education, health, infrastructure, etc., but they will learn about cross- cutting issues that appear in all fields of development cooperation.
This course will be taught during Fall 2018 by Professor Elke Jahns-Harms

受講動機は、トピックに興味があったことに加えて、Shopping dayに行ってみたらElke教授がすごくエネルギッシュで話が面白かったので、即決しました。

バイタリティ溢れるElke教授は文字通り身体全体を使って話します。授業のライブ感がすごいので、日々の課題に追われてどんなに眠くなりそうな状況で授業に行ったとしても絶対に眠くならないと思います(笑)。そして、授業中の教え方やファシリテーションが非常に上手いだけでなく、コンテンツやマテリアルが非常によくオーガナイズされているので、毎週の課題をこなしていくことで極めて効果的に開発援助に関する理解が深まり使える知識が身につきます。本授業や、後述の計量経済を履修した上で、来年はインパクト分析の授業も取れたらと思っています。

EIB E213: ECONOMETRICS

最後に紹介するのはSchaffner教授による計量経済学の授業です。統計学や微分積分学についてある程度の基礎体力があることを前提に、「世の中の経済や政治や社会の関係について、データを基にした定量的な分析ができるようになろう」という授業で、データ収集や回帰分析の際の留意事項などを学びつつ、STATAという統計ソフトを使って実際に分析をしたりします。Schaffner教授は計量経済を用いた研究や実務について非常に豊富な経験を持つだけでなく、授業に使う素材が非常によくオーガナイズされていたり、オフィスアワーがたくさん設定されていて学生のあらゆる質問に答えてくださろうとしていたり、学生思いの大変熱心な教育者でもあります。

フレッチャーのホームページからコースの概要を引用します:

“This course introduces students to the primary tools of quantitative data analysis employed in the study of economic, political and social relationships. It equips students for independent econometric research and for critical reading of empirical research papers. The course covers ordinary least squares, probit, fixed effects, two-stage least squares and weighted least squares regression methods, and the problems of omitted variables, measurement error, multicollinearity, heteroskedasticity, and autocorrelation. Prerequisites include familiarity with (1) basic probability and statistics (B205), and (2) basic concepts of functions and derivatives (E210m or an introductory calculus course).
This course will be taught during Fall 2018 and Spring 2019 by Professor Julie Schaffner”

私がこの授業を履修している主な理由は、自分の将来のキャリアにはSTATA及び定量分析のスキルが必要になる可能性が高いと思っていること、及び、定量分析はあらゆる意思決定プロセスで多かれ少なかれ必要になると思うこと(=統計学や計量経済学のコンセプトは、どんな仕事にも応用できると思っていること)です。

ここからは余談ですが……

私はかつて高校時代、数学に重度の苦手意識を持ってしまい、数学を極力避けて履修せずにきた人間なのですが、こうして自分事(ジブンゴト)になると、人間急にやる気が出ます(笑)。自分のキャリアに実は繋がるのかもしれないなら、食わず嫌いとかせずにとりあえずもう一回やってみようと思って数学に向き合ってみたところ、今になって数学のおもしろさに気づきました。

当時私が数式を使う教科に熱が入らなかった理由のひとつは、「公式や途中式や、次々に登場する記号(Σとか∮とか)が、どうしてそうなるのか/どうしてそうするのか飲み込めず、ついていけなかった」ことでした。

しかしより本質的な理由としては、学んでいる数学の各単元について「このコンセプトで一体何がしたいのか」「実社会でどう役に立つのか」を知らなかったこと、それによって「数学は問題を解くだけでおもしろくないし、自分の将来にも関係がない(学校の授業が終わればもう数学と出会うことはない)と勘違いし、自分事じゃなくなってしまった」こと、その結果「(授業に)ついていこうとしなかった」ことだったのだと思います。

例えば積分が、曲線で描かれる関数とX座標の間の「面積がわかる」から画期的なのであり、確率密度関数という考え方と組み合わせると「面積がわかる」ことに「どんな意味」があって、「世の中の何がわかる」のか、とか知ってたら絶対高校でもっとちゃんと数学勉強してたと思うし、数学をあんなに嫌いにならなかったと思うんだけどなぁ。

と言いつつ、またこうして学ぶ機会を得られたことに感謝して頑張ります!

See you soon:)

 

(*今回のアイキャッチ画像、及び本文中の画像はフレッチャースクールサイト及びニューイングランド音楽院サイトより引用しました)

(おまけ)履修科目決定までの流れ(2018年秋)

【基本的なイメージ(MALDの場合。ほかの学位の場合は一部異なります。)】

  • 1学期に原則として4つの授業を履修し、2年間で16の授業を履修することになる。逆にいえば、めちゃくちゃ面白そうなクラスがたくさんあるのに、16しか履修できない(履修せずに聴講するという手はあるが、当然更に忙しくなる)。
  • Field of Studyは、2つ満たせば良い。卒業証書等に載ることはないので、3つ以上満たしたところで全く意味はない(取りたい授業を取ったら結果的に3つ以上満たしてしまうという分には問題なし)。ただし、1つの授業を2つのField of Studyにダブルカウントするのは不可。
  • ハーバード等、フレッチャー外の授業については卒業必要単位数の1/4まで登録可能。ただし各セメスターにつき最大2つまでしか登録できない。

【ざっくりしたスケジュール】

ではまた!:)