目次
- 1 The Fletcher School in Law and Diplomacy (Fletcher), Tufts University.
- 2 School of Advanced International Studies (SAIS), Johns Hopkins University.
- 3 School of International and Public Affairs (SIPA), Columbia University.
- 4 Harvard Kennedy School (HKS), Harvard University.
- 5 Master of Science in Foreign Services (MSFS), Georgetown University.
- 6 その他の国際関係&公共政策系大学院
- 7 APSIAって知ってますか?
今回は国際機関等のキャリアを目指す方に向けて、修士号を取得する場所として検討すべき難関大学院のいくつかを紹介していきます。と言っても完全に私見なのでその点ご容赦くださいませ(どうしても私自身の出願プロセスで志望度が高かった学校の情報が多めです、バイアスにご注意ください)。最初の5校については実際に私がキャンパスビジットしているので、その際の雰囲気も踏まえてお伝えさせていただきます。尚、記載した大学院のほとんどは学費が高額ですが、社費/国費で行くことができれば学費を払う必要はないですし、私費で行くとしても給付型奨学金(返さなくてよい奨学金)等を駆使すれば学費の自己負担分をある程度減らせるはずですので、頑張ってください。
The Fletcher School in Law and Diplomacy (Fletcher), Tufts University.
【主な強みや特徴】
- Very close-knit community: 学生が競争よりも協力をより重視する校風で、ボストン郊外の丘の上に所在し学生数も比較的少ない(1学年200名程度)ことから、学生同士の仲がすごく良くなり、教授との距離も非常に近くなり、そして卒業生のネットワークも大変強力になります。日本以上のコネ社会である米国や国際機関界隈において、フレッチャーマフィアという言葉は有名で、国際連合をはじめとする国際機関に多くの卒業生を送り込んでいます。尚、毎年約半数の学生がinternational studentsであり、その国籍は毎年70以上とのことで、世界中どこに行っても卒業生を見つけられるようです。また、前職のキャリアは国際関係分野に限らずバラエティに富んでおり、進路についても政府機関・国際機関・民間企業・NPOやNGOまで多様です。
- Flexibility & Capstone thesis: 大半の学生が在籍するMALDコース(設立当初からのフラッグシップコース)では特に、必修科目が非常に少なく、自由な組み合わせで履修ができるので、各々の興味関心に応じて深掘りする分野を決められたり、それ以外の周辺分野も含めて学際的な勉強ができたりします。また、2008年に新設された少数精鋭のEIBコースは、ビジネスを通した「国際問題の解決や社会貢献」に興味関心のある学生が多く在籍していたり、少人数ゆえの学生同士や教授との非常に近い距離感があったりといった特色があり、他の大学院のMBAと比べても大変魅力あるプログラムです。そしてどのコースにおいても、専門職大学院としては珍しく卒業論文の執筆が可能(卒論以外のCapstoneを選択することも可)です。修論を書くことで専攻分野について理解を深められたり、リサーチ力やライティング力が向上する上、将来PhDへ進学したくなった場合にはその修論を使うことができます。
- Boston advantage: 米国及び世界の学術の中心地であるボストンに所在。フレッチャースクールは1933年にハーバード大学とタフツ大学が共同で設立した米国初の国際関係大学院であり、現在は運営はタフツ大学が行なっているものの、設立当初の経緯もあって、卒業に必要な単位の1/4(在学2年間で取る16個の授業のうち、最大4個)はハーバードの各大学院(ビジネススクールやロースクールを含む)で取得可能です。実際に、フレッチャー生がHBSやHKSで授業を受けることは日常茶飯事です。また、学術機関が集積していることから、大学の垣根を超えた有志による勉強会等も盛んなようです。
【主な留意事項】
- ボストンに所在するゆえ、NYやDCと違い、学期中にインターンを行うことは極めて困難です。
- 国際関係分野では非常に有名であるものの、一般的な知名度ではハーバードやコロンビアといった他の名門大学院に遠く及びません。
【もっと知りたい方へ:おすすめURL】
- 学校HP
- アドミッションブログ
- 日本人向け非公式HP(日本語でかなり大量に情報を収集できるサイトです。)
- 日本人MALD在学生の個人ブログ(学校や授業に関する詳細な情報をはじめ、国際関係大学院あるいは大学院留学を目指す人に響くであろう、示唆に富んだ記事が豊富にあります。)
- 日本人MIB在学生の個人ブログ(MALD/MIB等に在籍する各国の留学生へのインタビューが特に面白いです。こんなに色んな人が来ているのかと、驚きと刺激を受けられます。)
School of Advanced International Studies (SAIS), Johns Hopkins University.
【主な強みや特徴】
- Sophisticated and very closed community: 協力よりも競争を促す校風であることや、良くも悪くも(基本的には良い意味で)エリート意識が高い集団であるゆえ、学生やOBOGコミュニティの結束は大変強そうです。SAISマフィアという言葉も非常に有名で、世界銀行をはじめとする国際機関に多くの卒業生を送り込んでいます。MAプログラムの1学年は400名強と多め(但し、倍率は高く難関)なので、入学後も学業及びインターン等の面で常に自律し向上していく姿勢が求められます。尚、約4割強の学生がinternational studentsです。
- E-con heavy curriculum: 必修で経済や統計を学ぶことになります。日本人で数学や経済が苦手であっても、他国出身の学生の方がより苦手であること、また1つの授業にTAを4名配置する等して授業時間内外でサポート体制は万全とのことなので、特に心配する必要はなさそうです。逆に、数学や経済が得意な方に対しては、上級クラスが設置されており、より難易度が高かったり実践的だったりする数学や経済が学べる模様です。そしてこのカリキュラムの特性上、社会から「SAIS卒業生は経済学がわかっている」とみなされます(ので、卒業後の就活にも有利)。
- Washington D.C. advantage: 米国及び世界の政治の中心であるワシントンDCに所在(ジョンズホプキンス大学の本キャンパスはボルチモア所在だが、SAISのキャンパスはDC中心部にある)。政府機関・国際機関・シンクタンク・NGO等の本部や事務所が集中していることから、学期中にインターンを行うことが可能です。SAIS生というネームバリューも活かしつつ、実際にかなり多くの学生が学期中にインターンを行なっている様子です。
- Bologna campus advantage: メインのMAプログラムでは2年生は全員DCキャンパスで学ぶことになりますが、1年生についてはDCキャンパスもしくはイタリアのボローニャキャンパスのいずれかで学ぶことになります(出願の際には「DC2年」「Bologna1年→DC1年」「どちらでも良い」の3択で希望が出せる)。ボローニャはDCと比較して、キャンパスの規模が小さかったり、キャンパス周辺にインターン先及び娯楽がなかったりする分、より密度が濃く仲が良いコミュニティが形成される傾向がある模様です。尚、SAISにはDCとボローニャに加えて、南京にもキャンパスが存在します。
【主な留意事項】
- DCキャンパスは、狭くはないがこじんまりした8階建くらいのビル3棟(3棟の距離は徒歩1分圏内)で構成されています。また、学生は学業以外にインターン等でも忙しそうです。ゆえにSAISのDCキャンパスは、大学キャンパスというよりも「オフィスビル」「就活予備校」などと形容されることがあります。絵に描いたようなアメリカの大学のキャンパスとは違うので、キャンパスの雰囲気を重視する方は下見を強くおすすめします。
【もっと知りたい方へ:おすすめURL】
- 学校HP
- アドミッションブログ
- 日本人在校生有志によるブログ(過去にどのような日本人の方が在籍されていたのかイメージができます。また、先輩方の記事を通してSAISの強みを把握することもできると思います。)
School of International and Public Affairs (SIPA), Columbia University.
【主な強みや特徴】
- Huge size & Columbia advantage: 1学年500名弱と、とにかく学生数が多い(つまり卒業生も多い)マンモス校であるというのが最大の特徴で、卒業生は世界中に広がっています。学生の質は文字通り玉石混合のようですが、それはつまり、素晴らしい学生もたくさんいるということです。また規模と同時に、コロンビアのネームバリュー(及びNYという立地)を活かして、著名な教授を何人も有しており、また教授の人数も多いので必然的に、自分の専門分野の教授や自分が教えを請いたい教授が見つかる可能性も高いです。
- New York advantage: 米国及び世界の経済の中心であるニューヨーク・マンハッタンに所在。多様な民間企業のオフィスや国連諸機関の本部が集中していることから、学期中にインターンを行うことが可能です。SIPA生というネームバリューも活かしつつ、実際にかなり多くの学生が学期中にインターンを行なっている様子です。また、マンハッタンの真ん中に突如出現する緑豊かで歴史を感じさせるメインキャンパスには、この大学に行ってみたいという気持ちを駆り立てられます(但しSIPAの建物自体は、メインキャンパスに隣接するビルです)。
【主な留意事項】
- 学生数がとにかく多く、意識が非常に高い学生から残念ながら低い学生まで幅広く在籍しているようです。また規模が大きいので、教授との距離も決して近くはないようです。ゆえに、入学して学位を取得するだけではなく、SIPA在学中の2年間を最大限実りあるものにしようという強い意志を持って、規模の大きさを積極的に活かすことが大事かと思います。
- 学費及び生活費が、他の名門私立大学院と比較しても特に高額です。
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- アドミッションブログ
- 日本人在校生有志のブログ(授業の様子やNY生活等、色々なテーマについて記事が書かれています。MPAとMIAのコースの違いなど、カリキュラムについても理解が深まります。)
Harvard Kennedy School (HKS), Harvard University.
【主な強みや特徴】
- Leadership: リーダーシップの発揮や、将来リーダーになることに関心がある学生が多いように感じられました。学校としても「世界のリーダー養成機関」としての自負があるようです。そしてやはりインタラクティブな授業の活気/熱気はさすがといったところです。
- Harvard advantage: ハーバードのネームバリューは世界どの国に行っても非常に強力なようです。また、キャンパスや街の様子も素晴らしく、絵に描いたような学園都市です。
- Boston advantage: 米国及び世界の学術の中心地であるボストンに所在。学術機関が集積していることから、大学の垣根を超えた有志による勉強会等も盛んなようです。
【主な留意事項】
- そもそもHKSは国際関係や開発に関する大学院ではなく、行政や政策について学ぶ大学院なので、米国国内や学生の出身国国内での事象や政治やリーダーシップに関心のある学生が多い印象を受けました。そしてHKSを進路の選択肢とする場合、HBS(MBA)やハーバード・ロー(LLM)等ではなくHKSに行きたいのはなぜか、についても考えてみると良い気がします。
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Master of Science in Foreign Services (MSFS), Georgetown University.
【主な強みや特徴】
- Utmost reputation (International affairs): MSFSは国際関係系の大学院として長年アメリカで最高の評判を得ていて、ジョージタウン大学自体も特に政治や外交の分野において長年にわたって最高の信頼と実績があります。
- Beautiful campus: 絵に描いたようなアメリカの名門大学で、その広大でおしゃれな敷地には、文武両道のスマートでナイスな雰囲気の学生たちが集まっています。
- Washington D.C. advantage: 米国及び世界の政治の中心であるワシントンDCに所在しているため、学期中にインターンを行うことが可能です。DCの外れにキャンパスがありますが、DC中心部までの距離は近く、アクセス良好です。
【主な留意事項】
- 学生数が極めて少ないこと、及び、アメリカ人で国務省(=外交官)を目指すような学生が多いことから、国際機関や開発などのキャリアを歩む人にとってはネットワーキング面で不利であるように思えます。一方で、日本人の方でも外交官の方や研究者(国際政治や地域研究など)の方にとっては、素晴らしい選択肢のように思えます。
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その他の国際関係&公共政策系大学院
≪米国≫
- Princeton WWS: 超少数精鋭のコース。合格者全員に奨学金(fully funded scholarship)が提供される特待ぶりで、おそらくは最難関校です。但し、極めて少人数(1学年70名程度)のため、ネットワーキング面では不利だと思われます。
- George Washington Elliot, American SIS, Syracuse Maxwell: いずれもアメリカでは名門校と言われていますが、私は深く調べていないので詳細不明です。在学中及び卒業後に、(米国人ではない)日本人がどれだけのバリューを出せるのかは要確認・要検討です。
≪米国以外≫
- LSE: 言わずと知れた英国ロンドンの超名門校。世界的に評判が高く、専攻は2年コースも1年コースもあり教授陣や授業についても充実のラインナップです。
- Sussex: 英国サセックス所在の名門校。特に開発学では長年にわたって世界最高の評価を受けています。1年で修士号が取得できることも大きな魅力かもしれません。
- Science Po Paris: パリにあるフランスの名門グランゼコール(エリート養成校)。世界中、特に欧州や仏語圏アフリカ等で、非常に高い評判があります。
- IHEID (The Graduate Institute, Geneva): 大学院のあるスイス連邦ジュネーブは、非常に多くの国際機関の本部(UNHCR、WHO等)が置かれていることから、国際開発系の授業の充実及びインターンの獲得の面でのアドバンテージが期待できます。尚、ジュネーブの生活費は高額ですが、IHEIDの学費は非常にリーズナブルです。
- Graspp: 東京・本郷にある東大の公共政策大学院。海外の名門校と比較すると学費が非常にリーズナブルです。また、ダブルディグリー制度に応募して選抜されればColumbia SIPA, LSE, Science Po Paris等の海外の名門校で1年/1年半学べます(交換留学と違って、留学期間中の学費については留学先の学費を払う必要があります)。
APSIAって知ってますか?
以上で私が出願時に調べた情報は出し尽くしてしまったので、あとは口コミやグーグルで調べてみてください。ちなみにAPSIAという、(ざっくり言うと)International Affairs専攻があって尚且つイケてる大学院、の連合組織なんかもあります。ここが、世界各地(日本を含む)での国際関係大学院の合同説明会を開催していたりもします。興味のある方は調べてみてください。
今日はここまで。
Ciao:)