4月最後の週末は、春学期のハーバードとタフツの合同授業であるInternational Humanitarian Responseのメインイベント、ハーバード主催の人道危機シミュレーションキャンプ(ボストン郊外の森の中で2泊3日キャンプを貼りながらのシミュレーション)に行ってきました。

尚、来年2020年は5月の最初の週末にやるみたいです。

授業自体もハーバードとタフツ合同なのでただでさえダイバーシティな面々(フレッチャー=国際関係、フリードマン=栄養学、HSPH=公衆衛生、HKS=公共政策、HBS=MBA、その他ハーバード大学院)が60人ほどいるのですが、

この大学院生向けの春学期の授業とは全く別に、実務家向けに4月後半の2週間の集中トレーニングプログラムがあり、その参加者50名ほどとシミュレーションで合流します。シミュレーションのチームはごちゃ混ぜになります。

この集中プログラムの参加者がこれまたすごくて、国境なき医師団の医師はじめメンバーが何人もいたり、国際NGOでガチで紛争地や自然災害直後の人道支援を何年もあるいは十数年以上やってきた人たちが混ざってます。

というわけで、110人が6~7人ずつのNGOグループ(どれも実世界に存在するNGOや人道支援機関)に割り振られるのですが、私のところは、

  • アメリカ人男性、軍人(直近は米海軍の医師)
  • アメリカ人男性、医師(直近は国境なき医師団の医師で南スーダン勤務)
  • フランス人女性、M&Eスペシャリスト(直近は西アフリカ紛争地での和平調停や平和構築)
  • インド人女性、プログラム評価スペシャリスト(直近はUNDPニューヨーク本部でアナリスト)
  • 中国人女性パラリーガル(特許法が専門だが、人道支援の世界へキャリアチェンジ志向)
  • 日本人の私

という6人で、今回のシミュレーションに関連する経験が一切ないのは私と中国人の二人だけでした。また、人道支援=過酷な環境にも関わらず、全体的に女性の参加者が多い印象で、感覚値ですが6割前後は女性でした。

そして我々参加者に加えて、ボランティアの方も百数十人いらしてくださり、ハーバードが本気で提供するシミュレーションに挑んできました。本気のシミュレーションって、こうも世界に入り込んでしまうのかと、びっくりしました(ふとした時にハッとして、これは本当の現実じゃない=シミュレーションなんだ、とやっと思い出すレベルでした。でもまたすぐに架空の現実に引き込まれます)。

そして肝心のシミュレーションの詳細や、学んだことなのですが、

 

すみません…

 

これは秘密なのです。汗

 

というのも、シミュレーションのシナリオは毎年違ったとしても、運営側にも教えたいシチュエーションや伝えたいテーマがある以上、所々のエッセンスやサブストーリーは似てくるので、未来の参加者が新鮮な気持ちでシミュレーションに参加してもらえるように、口外NGなのです。

さらに気になる方は直接私に聞いてもらえたらと思います(*履修検討中の方には中身は話さないようにします)が、非常にざっくり言うと、広大な森の中をとある貧しい国家の国境沿いの地域に見立てて、紛争や自然災害が引き金となって直近著しく状況が悪化している状況下で、大量の避難民や民兵などが入り乱れるその地域にNGOのメンバーとして派遣される、というような設定です。体力的にも精神的にもかなり過酷でしたが、得るものは非常に大きかったです。

 

個人的な学びとしては、しかし、「人道危機の現場に、“お荷物”を置いておくスペースはない」(だからこそのシミュレーション)と授業中に教授が言っていたことを痛感することとなりました。

まずは、専門性。自分は医師じゃないし、メディカル系の専門性もない。M&E(モニタリング評価)の専門家でもないし、ロジスティクスや食糧や水・衛生や教育の専門家でもない。授業で一通りのコンテンツは押さえられていたけれど、こっちは授業で習ったこと=基礎的な内容すらなんとか思い出すのが精一杯で(十分染み込ませられていなかったということ)、能動的に先手先手で動くことなど全然できず、悔しい思いをしました。

そして、身体的&精神的タフネス。初日の夕方から二日目明け方までがあまりの土砂降りでテント内が浸水してしまい、翌朝私が寒さのあまり凍えそうで集中力が切れていた時も、アメリカ人男子2人は医師の専門性がある上に非常に頑丈(1人は小柄ながらさすが米海軍で鍛えられていて何が起きても1mmも動じていない頼れるリーダーで、もう1人は身長190cmは超えているであろうガタイの良いパワー系大男)で、頑丈でもなければ専門性もない私は居た堪れない気持ちになりました(苦笑い)。

さらに、語学力のビハインド。人道危機という一種の極限状況下では「スムーズな意思疎通ができる語学力やコミュ力」は100%マストです。語学はあくまでツールなので、語学が完璧であろうがなかろうがツールとして通用すれば問題ないのですが、人道支援の現場ではこの通用するかどうかのハードルが数段上がる印象です。それは人道支援の世界が、開発の世界やビジネスの世界と比べてより上位にあるとかそういうことではなく、ゴールやアクターや状況といった性質の違いに起因するものだと思います。

極めつけはモチベーション。上記の困難を乗り越えてでも、紛争地や災害直後の地域に赴いて人道危機下にある人々に向き合いたいというモチベーションが、今の自分には足りておらず(事前に具体的にイメージできていなかったというのもありますが)、結果として十分な準備ができていなかったり、上記の困難を乗り越えてでも本番中に馬力を出し切ることができず、納得のいく貢献ができませんでした。

という、最後は反省文になってしまいましたが(苦笑い)、私に関しては今学期そしてこの1年間、このシミュレーションだけでなく様々な経験を通して、自分のモチベーションがどこにあって、その源がどこにあるのか、やっとわかってきたことに、すごく意義を感じています。

一緒に友人たちは、授業で学んだ内容や、これまでの各々の仕事での経験を、このシミュレーションにぶつけることで、より深い学びを得ている人もたくさんいました。なのでこの世界で活躍すると決めている人にとっても良い実践の場になると思います。

See you soon:)