今日はついに、夜の未電化村へ。「Wassha」の瞬間を見てきました。今日は同僚のウィリアム(20代前半の美男子)が付き添ってくれました。ウィリアムはたまたま休暇の合間だったにも関わらず、家から近いし大好きな村の人にも会えるし、と言って快くここまで来てくれました。本当に感謝です。
ダルエスサラームから車で40分ほどの、バガモヨ地区の小さな村へ行きました。この村のエージェントのアモスさんは、人柄も売上も大きい素敵なお兄さんです。彼のキオスクにはひっきりなしにお客さんが来ます。
印象的だったのは、子どもたちが500シル硬貨(25円相当)を握りしめてランタンを借りに来ること。ゲットして、ルンルンして帰って行く子たち。この明かりを使って、今日は何をするのかな。
エージェントの彼がWasshaのランタンを扱っているのは、この子をはじめ村人の笑顔と、そして村の経済的な発展の為とのことでした。「このランタンで、子どもたちが宿題をできるようになって学校の勉強についていけるようになれば、母子が灯油ランプを使わずに済んで安全で健康になれば、ロードサイドビジネスの稼ぎがもう少し増えて家計に余裕ができれば、可能性が無限に広がっていく」そう熱っぽく語ってくれたアモスさん。話せば話すほどイケメンです。
ちなみに彼はこの村から10分くらい歩くと着く幹線道路沿いにより大きいお店(調味料とか色々売ってる)を持っているそうで、そちらは奥さんが切り盛りしているそう。そんな彼にとっては、ランタン貸出で得る収入が家計の足しになっていることはありがたいながらも、彼の家の家計的にはランタン貸出しなくてもお金は十分あるそう。こんなエピソードからも、彼がただただ純粋に、周りのみんながもっと笑顔により良く生きられたら、と思ってランタンを扱ってくれていることが伝わってきます。
(もちろん、ランタン貸出を家計の足しにしているエージェントさんもたくさんいて、それはWin-Winなのでとても良いことです)
この村はすごく平和そうで穏やか・和やかです。子どももたくさんいるし、笑顔の人が多数。そして、明らかに外国人の私を見ても全然「お金」扱いしないのも嬉しいポイントです。笑
しかしそれでも、ウィリアムに聞いたところ、彼の見立てではこの村の人々の一般的な収入はおおよそ、5000シル~10000シル。つまり1日2ドル強。厳しいコンディションだと繰り返していました。そして子どもの教育は、プライマリー9割、セカンダリー6割~7割。しかし真の問題は、教育を受けても教育を活かして働く場所がないこと。つまり、せっかく中等教育や高等教育を受けられたとしても、その教育を活かせる職場が不足しているとのこと。
社会問題も国際問題も、原因も結果もいつだって複合的です。
夜になって、エンドユーザーの村人たちに、話を聞かせてもらいました。
こちらのお母さんとお子さんは、毎日ランタンを使っているとのこと。ランタンの明るさが素晴らしいといっていました。灯油ランプを使っていた時は明かりが小さくて、ごくわずかな範囲しか照らせなかったけど、WasshaのLEDランタンなら部屋中を照らせると。
あとは、「環境に良くて安全」という声も多く、上記のお母さんを含め女性はほぼ全員言及していたと思います。灯油ランプは、灯油を運ぶのが重労働な上に危険ですし、いざ灯油ランプを灯すと今度はタバコの数十倍の体に良くない物質を撒き散らすので健康被害がどうしても深刻になってしまうそう。
村の中で露店を開く人たちは、稼ぎが増えることも嬉しいが、ランタンが明るいことで人が集まってくること自体も良いとのこと。確かに男女や大人子ども問わず、ランタンのある露店の周りには人が集まっていて、笑顔で談笑している様子が見受けられました。
幹線道路沿いでロードサイドビジネスを営む人たちは、前はお店を19時とか20時に閉めていたけれど、真夜中頃まで開けて稼ぐこともできると言っていました(村から歩いて10~20分ほどの幹線道路は交通量が多く、バス通勤者も多いので、お店を開けておけば需要はあり、稼ぎも増えるそう)。
このおじさんは、ビジネスで使った後、家に持って帰って、子どもが本を読んだりするのに使うとのこと。稀に、途中でランタンが不調になると、ビジネスも早く畳まないといけないし、家でも使えなくて子どもが残念がるとのこと。この「不調」というのはトリッキーで、ランタンが悪いというより、「ランタンの使い方」がわからずに使っているエンドユーザーがいる、というケースが大半のようでした。
ランタンに使い方も何も、と思うかもしれませんが、まず1つ目のあるあるは、雑に扱ってしまうケースです。「ランタンも機械なのだから、投げたり、雨ざらしにしたり、そんな風に扱ったら良くない」ということを私たちは半ば当たり前に知っていますが、エンドユーザーの中にはそれがわかっていない人もいます。ランタンには名前が書いてあるわけではないので、翌日の夕方に借りに行く時は違う個体を借りる可能性が極めて高いです(同じキオスクで100個ランタンを扱っているとしたら、昨晩と同じランタンに当たる確率は単純計算で1/100)。そうすると、運悪く雑に扱われてしまって虫の息(修理が必要)な状態になってしまったランタンがその日の使用中に不調になり、運悪く借りてしまった人が割りを食う、ということです。
また2つ目のあるあるは、WASSHAランタンはいま光を3段階に調節できる仕様なのですが、「明るくすればするほど充電の減りが早い」ということを理解できていない人がいます。1段階目や2段階目でも十分明るいのに、明るい方がいいっしょ!と言って3段階目を使う。でもそうすると減りが早く、うちのランタンは今日調子が悪かった、となってしまう。確かに、小学校の理科の授業でボルトやアンペアについて習っている我々からすると論理的に考えて、あるいは理科の授業を覚えていなくても日常生活で電気を多く使っている我々からすると直感的にも、そりゃそうなるわ、という話なのですが、なかなか難しいですね。
そして、このお店のテラス席(?)で、英語が非常に流暢なお父さんに出会いました。このお父さん以外はみんなスワヒリ語だったので通訳が必要だったのですが、会話のスピードが単純に倍速以上になって、「効率」という意味でも言語の大切さを実感しました(効率以外にも、「信頼」や「安全」という意味でも言語は大切です)。
ランタンを2年間使い続けていて、WASSHAにすごく感謝しているとすごく熱っぽく言ってくれました。
そして、せっかく君ら(ウィリアムと私)がこの村に来てくれたから、俺の話を聞いてくれ、伝えたいことがたくさんあるんだ、というのでしばらくおじさんと話しました。まず、ランタンをレンタルではなく買いたいんだ、購入させてくれ、と。そこでウィリアムと私で、「故障した時とかに、エンドユーザーが困らないで済むこと(Wasshaが所有に伴うリスクを取っていること)」などの説明をするとよくわかってくれ、「僕は彼(エージェントのアモスさん)しか知らないから、その後ろにいる人間を知らない。だから、こうやって話せて、そして後ろにいる人間の持っているロジックを知れることはありがたい、それなら納得できる」と言われました。
こういうやりとりがあると、ウィリアムや私が村に行って(村人に対して直接的にも)意味があったと思えるし、エージェントのアモスさんも隣に付いていてくれたので、きっと次に他のユーザーから「買わせてほしいのにダメなの?」と聞かれた時によりよく説明できるでしょうし、よかったなぁと思いました。
そしてここぞとばかりにお父さんは、「あとなんだっけな、えーっと、言おうと思ってたことがまだあったんだよ」とたくさん声を聞かせてくれて、私自身もすごく前のめりに人の話を聞き、大学院のどの授業の時よりも最も真剣に伝えたいと思って話したような気がします。学校は学校で素晴らしいところがたくさんありますが、学校だけでなくやはりリアルワールドに行くことで、知識や経験や想いが深まっていくんだなぁと思いました。
彼がランタンをレンタルではなく買いたかった理由は、日によって受け取ったランタンが不調で途中で使えなくなってしまうことを避けたかったようでした。取り替えに行けば替えてくれることになっているのですが、アモスさんのお店はいつも大繁盛なので、夜途中で使えなくなってキオスクに交換しに行っても在庫が全て出払っていてその晩は取り替えられないとのことでした。
ではランタンの在庫を増やせれば良いのですが、そう簡単な話でもなくて。ランタンを増やせばそれだけコストが増えるので、増えた分ちゃんと貸し出しできなかったら赤字になってしまいます。このお父さん(お客さん)の言う「トラブルがあって替えに言っても在庫が常に出払っている」という情報は、大事な情報ですがお父さんの主観でもあるので、実際どのくらいの日数どれくらい出払っているのか、検証する必要があります。
というわけで稼働率(需要/供給、つまり、実際に貸し出されたランタンの数/在庫ランタン数)という指標が作られていて、これが理想としては90%台後半で推移することが望ましいです。季節等の要因によってもランタンの稼働率が変化する可能性もあるので、そこも加味する必要があります。そこでわかったことは、アモスさんが担当するこの村だけを見れば、稼働率は常に極めて高く、このお店ならランタン増やしてもいけるんじゃないか、ということです。
しかーし、タンザニア全土で事業を展開していると、アモスさんのようなすごいエージェントさんもいれば、売り上げ成績が良くなかったりやる気があまりなかったりするエージェントさんもいます。例えば、ランタンを常に相当数余らせてしまっている(月で均して60%台とか)エージェントさんの言い分として、「需要が増えた時に対応できないとお客さんの役に立てない」というものがあります。この言い分は一見もっともですが、とはいえ50個の在庫のうち常に20個が余っているというのは、マクロで見た時には大きな損失です。
この状況を改善するため、Effective lantern allocationというオペレーションを実施中です。詳細は割愛しますが、どこかで新しいランタンが必要になった時、他の場所で常に余っているランタンがあるなら、それを回収して回そう、というイケてる趣旨です。とはいえこの「回収する」というのが難しくて、余ってるから回収させてくださいね、と言ってもエージェントさんが様々な理由で回収しないでくれとゴネてくる場合があります。
そしてWasshaがソーシャルビジネスであるが故の難しさだなぁと思ったのが、無理やり回収するわけにもいかないということです。(どんな理由であれ)もしもエージェントさんとの契約を打ち切ることになってしまった場合、その村の人たちはWasshaのランタンにアクセスできなくなる、ということです。そうすると、その村の人たちは明かりのない生活に逆戻りするか、運ぶのが重いし危険&明かりを灯すとタバコの40倍有害なケロシンランプ(灯油ランプ)の生活に逆戻りするか、になってしまいます。
エージェント側が努力を怠っていたり、あるいは何らかの違反をしていたりしたら、毅然と対応をしないといけないのは当然です。しかしそこで、普通のビジネスであれば「儲からなさそうだから撤退する」「ルールを守れないなら切り離す」という判断があり得るのですが、ソーシャルビジネスは裨益者のことを常に考えた上で動く必要があります。どちらのビジネスも、いろいろな要素が複合的に複雑に絡み合っていて、臨機応変に対応しないといけないのは同じですが。
そんなこんなで、一筋縄ではいきません。
でも、難しい難しいって言っていても前に進まないのもまた事実。オフィスに帰ってから、今の制度的な仕組みの長所と欠点と、現場で見聞きしてきたこととを踏まえて、「こうやったらもっと上手くいくんじゃないか」と思ったことをいくつか、僭越ながらWassha経営陣のみなさまに提案させていただきました。
めちゃくちゃ長文になってしまったので今回はここで一旦終えますが、こんなに書いても見聞きしたことのうちのごくごく一部です。私のことをリアルで知っている方、興味があれば色々話しましょう。
世の中やっぱり、現場の話を聞かないとわからないことだらけです。訪問させていただけて本当によかったです!ありがとうございます!
See you soon:)