前回の交換留学先の選び方や、以前の大学院紹介に関連して、今回は留学前後の語学力の話をします。

語学力は高いに越したことはない

まず大前提として、語学力は高いに越したことはありません。理由は幾つもありますが、概ね下記に集約されると思います:

  • 【出願時】出願できる大学/大学院が増え、より難易度の高い大学/大学院にも出願できる。
  • 【出願時】明らかに合格しやすくなるし、奨学金がもらえる可能性も高くなる。
  • 【在学中】授業の中身に集中できるし、グループワーク等でクラスに貢献できるし、レポートもしっかり書けるし、学業成績も良くなる。
  • 【在学中】日常生活や課外活動においても、幅広い話題を密度高く話せるので友人ができやすいし、信頼関係を築きやすい。
  • 【在学中/卒業後】語学力が高い方が、インターンや仕事探し等の際にチャンスを掴みやすい。

せっかく1年以上(もしくは半年以上)留学に行くのであれば、かつ、将来世界で活躍したいと思うのなら、留学を実り多いものにするためにも、また留学終了後の将来の可能性を広げるためにも、ぜひ語学は頑張ることをおすすめします。

ちなみに私は、かつて学部時代の交換留学のときは語学の面で挫折を味わった(十分に勉強をしなかったことを猛省している)人間なので、自戒の念も込めて書いていきます。

 

「短期留学」及び「ワーキングホリデー」に行く前に必要な語学力

短期留学(数週間〜2,3か月くらい語学学校に通う等)の場合、行く前に必要な語学力というのは特にないと思います(語学力ゼロで行っても良いし、かなりできている状態で行っても良いと思います)。また短期留学の期間としては、その言語の中級者以下で、かつ短期留学に初めて行かれる方は、できれば4週間以上をおすすめします。経験則ですが、学校や環境に慣れるまでになんだかんだ2週間くらいかかるとすると、主体的に楽しめるようになるのは3週間目以降だと思うので。尚、全くの初心者の方でも、12週間くらい現地で一生懸命勉強すれば中上級レベルには到達するはずです(アラビア語等の難関言語を除く)。

ワーホリの場合も基本的には同様だと思いますが、現地で職を探す場合は、語学力がある程度以上ある方が選べる職の幅が広がります(農園でフルーツピッキングで稼いだり、ホテルの清掃スタッフとして働く場合など、黙々とこなす系の業務では、語学力はそこまで問われないはずです。しかし、ホテルで受付や接客をしたり、人気が高い仕事(例:冬のスキーリゾートでの山ジョブ等)をしたい場合には、語学力はあるに越したことはありません)。

またいずれの場合も、私は日本人同士で仲良くなること自体は否定しませんし、私自身も海外で仲良くなって今でも親しい日本人の友人が何人かいますが、日本人同士で「つるみ過ぎることのないように」気をつけてください。せっかく海外にいるのですから、滞在中のできるだけ長い時間、ぜひ日本以外の地域から来た人と英語で(もしくはその土地の言語で)コミュニケーションをとってみてください。

 

学部生が、半年〜1年以上の留学をする前に必要な語学力

理系の方はケースバイケースですが、文系の方よりも多少緩やかな基準でも戦えると思います。文系の方はつべこべ言わず(?)下記を目安に努力をしてみてください。下記目安に届いていれば、他の人たち(留学に行かなかった人たちや、留学に行ったけれど真面目に勉強しなかった人たち)と自分を明らかに差別化できるはずです。

留学先で英語を主に使用する場合

  • TOEFL iBT試験で少なくとも80, なるべく90以上

留学先で英語以外の言語を主に使用する場合

  • 世界的に通用する試験で、CEFR基準のB2(中上級)レベル以上。B2が取れない場合はB1(中級)でも良いが、その場合は渡航後に人一倍の努力をすべき。尚、世界的に通用する試験の例としては、フランス語ならDELF/DALF、ドイツ語ならGoethe-Zertifikat、スペイン語ならDELE、ロシア語ならТРКИ、中国語ならHSK、といったあたり。

 

大学院生が、留学あるいは進学をする前に必要な語学力

こちらも、理系の方はケースバイケースではあるものの文系の方よりも多少緩やかな基準で大丈夫だと思います。文系の方はそもそもTOEFL iBT 100もしくはCEFR C1レベルが出願の足切りラインになっている大学院が多い(但し、実際には出願時足切りラインについては個別交渉可能なケースが多々あります)ので、出願時点で少なくとも100もしくはC1を確保しておくべきです。

留学先で英語を主に使用する場合

  • TOEFL iBT試験で少なくとも100, なるべく105, できれば110以上

留学先で英語以外の言語を主に使用する場合

  • 世界的に通用する試験でCEFR基準のC1(上級)レベル以上。フランス語ならDALF C1以上、ドイツ語ならGoethe-Zertifikat C1以上、スペイン語ならDELE C1以上、ロシア語ならТРКИ-3以上、中国語ならHSK 5〜6、といったあたりを確保しておきましょう。

 

留学後に必要な語学力

留学後に必要な語学力は、留学自体の目的や、留学後のキャリアビジョン等によって、人それぞれです。私の肌感覚で恐縮ですが、留学後に目指したい語学力の目安を列挙してみました。

英語

  • 新TOEICで730点以上:渡航前に英語が苦手だった方は、このあたりが取れれば素晴らしいと思います。海外旅行で外国人とコミュニケーションをとって楽しめるだけでなく、英語以外のスキルが高ければ海外出張や駐在も可能だと思います。
  • 新TOEICで860点以上(旧TOEICで900以上)(TOEFL iBTで80前後):日本の就職活動では十分有利になるレベルです。企業など組織の後ろ盾があれば海外駐在や海外現法就職も全く問題なくこなせるはずです。
  • TOEFL iBTで90点以上:日本やアジア圏だけでなく、世界中どこに行っても「自分は英語ができる」とドヤ顔で言っても特に差し支えないレベルだと思います。TOEICしか知らない人とは次元の違う領域に突入していきます。
  • TOEFL iBTで100点以上:ここまでくれば、世界中どこに行っても、英語が原因で実現できないことはほとんど何も無くなるはずです。教養があるネイティブとも、機智に富んだやりとりができるレベルになってくると思います。
  • TOEFL iBTで110点以上:立派な準ネイティブです。というか、このレベルの人は多くのネイティブよりも上手にかつ正しく英語を操れると思います。教養あるネイティブも喜んでくれるレベル、世界中どこでも仕事でもプライベートでも一目置かれるレベルだと思います。

英語以外の言語

  • 短期留学の場合、まずは、世界的に通用する試験でCEFR基準のA2(初級)が取れれば、旅が楽しくなると思います。上述のCEFR基準のB1(中級)が取れれば「二外ができる人」と言えます。B1保持レベルなら旅先などで困ることはまずなくなるし、できる話の幅もかなり広がって会話が楽しくなると思います。そして、短期留学でもしCEFR基準のB2(中上級)が取れれば大変立派だと思います。
  • 1年以上留学した場合は、CEFR基準のC1以上(上級:その言語での仕事レベル・現地の大学院入学レベル)を目指したいところです。難しければせめてCEFR基準のB2(中上級:その言語での仕事レベルの入口・現地の学部入学レベル)を取りたいところです。
  • 前回の記事でも少し言及しましたが、英語以外の言語(第二外国語:二外)を仕事で使いたい場合、特殊なキャリアを歩んだりレアな職業に就かない限りは、世の中において二外が単独で強みになることはほとんどなく、二外と英語がセットでできて初めて大きな強みになるケースが大半です。ゆえに、二外を頑張ることは素晴らしいですが英語もある程度やっておくことをおすすめします。この「ある程度」の目安は、少なくとも新TOEIC 750前後 / TOEFL iBT 70以上、できれば新TOEIC 860以上 / TOEFL iBT 80以上くらいだと思います。

 

もちろん語学力以外も大事だけど…

さて、今回は語学力に関してだったので、語学力の話ばかり書いてしまいましたが、留学に行くにあたって、また留学先で充実した留学生活を送るにあたって、語学力以外にも大事なことはたくさんあります。しかし一方で、充実度はある程度は語学力に比例することも確かです。

さらに言えば、語学力以外に極めて大事な力のひとつは「ハードルを乗り越える力(意志や目標をしっかり持って実現のために頑張る、PDCAを回して試行錯誤をする、等)」であり、この「ハードルを乗り越える力」があれば留学が充実するだけでなく語学力も上がるはずなのです。

私がかつて交換留学して挫折した時は、一通りの生きるためのコミュニケーションや、学校や旅先や家での簡単な雑談はそれほど不自由なくできるレベルでしたが、大学の講義にはほとんど全くついていけず、グループワークでは同級生に負んぶに抱っこで、参ってしまいました。今思えば、当時の私は語学力自体も不足していたし、「ハードルを乗り越える力」も不足していて、その結果また語学力が伸び悩む、という状態でした。そんな私の経験、及び、私の周りの様々な友人知人の語学力のレベル感も確認しつつ、これくらいあれば語学が足を引っ張ることはないだろう、と私が判断した基準が本記事で挙げたレベルです:留学直前までに、学部生はTOEFL iBTなるべく90以上(もしくはCEFRのB2レベル)、大学院生は留学前にTOEFL iBTなるべく105以上(もしくはCEFRのC1レベル)、を目指して語学の勉強頑張ってください。ちなみに今夏より大学院進学予定の私の語学力はまだTOEFL iBT 104です……私も頑張ります。

 

今日はここまで。

Ciao:)